もう一人、注目の人を挙げるとすれば、片平なぎささん。
『リバース』(TBS系金曜午後10時)では謎の死をとげた広沢由樹の母・昌子を熱演しています。息子の事故死をどうしても受け入れられない母は、必死に情報を集めようとする。片平さん演じる疲れた母の姿が、切なくて凄味があって怖い。白髪交じりの毛を振り乱し真実に迫ろうとする母親像。画面に映る時間はさほど長くはないのに、鬼気迫る雰囲気が異様で、印象深く視聴者の中に刻みこまれるから不思議です。
片平さんもかつてはぴかぴかのアイドルでした。そして「2時間ドラマの女王」を経て、今回はミカン農家の母。愛媛弁を使いこなし息子に対する凄まじい執念を浮き彫りにしていく。
演技、筋立て、演出力、ともに緊張感に包まれたこのドラマ。最終回は何と、オリジナル脚本が用意されている。原作者・湊かなえさんがわざわざドラマのために書き下ろすというのですから目が離せません。
役者の新しい魅力を発見することは、ドラマ視聴の大いなる楽しみ。そうした役者の力を引き出すドラマを高く評価したい。視聴率という「数字」だけがドラマを測るモノサシではないことを、和久井さんや片平さんの演技が教えてくれています。