国内

ネットの反差別運動の歴史とその実態【3/4】

◆「ぱよぱよちーん」発言でレイシスト認定

 当時、反差別界隈はネトウヨ以外からもその攻撃性からすでに叩かれる存在にはなっていたが、さすがに個人情報晒しはやり過ぎだろうということであざらしに対して批判が殺到。だが、あざらしはレイシストに対してはそれくらいしなくてはいけない、といった主張をし、自身の行為の正当性をアピールした。

 実際にリストを作ったのは別人だったものの、その後の公開などに積極的に関与したのがあざらしであることから、あざらしの個人情報暴き運動がネット上で開始したのである。いわゆる「ブーメラン」というヤツで、やられたらやり返す、ということだ。そんな時、突如として現れたのが元タレント・千葉麗子だ。彼女のツイートをきっかけに、あざらしがセキュリティソフト関連の会社に勤務する男性・Kであることが明らかになり、さらには千葉とKのツーショット写真も過去の千葉のツイートから発掘された。後に千葉は『さよならパヨク』という書でKと愛人関係にあったと明かしている。出会ったきっかけは、反原発運動である。そして「ぱよぱよちーん」についてだが、2013年末から2014年1月初旬にかけてのKから千葉へのツイートがまとめられた。そこにはこんな言葉が並ぶ。ハートマークや絵文字付きの実にファンシーなツイートの数々である。

〈レイちんぱよぱよちーん 今日は後ほどにゃん〉
〈レイちん、あけおめ、ぱよぱよちーん 今年も力を合わせてがんばろ〉
〈レイちんぱよぱよちーん 大晦日デートで前髪切ってあげようかにゃ〉
〈普段はハードコアなのですが、レイちんにはデレデレになってしまうものでww〉

「レイちん」が千葉麗子のことで、ぱよぱよちーんは「おはよう」の意味である。レイシストに対する激しい言葉での罵倒を繰り返す、当時50代中盤のKのこれらの発言にネットの一部では大笑いが起きていた。Kの口ひげを蓄えたダンディな顔写真もすでに公開され、セキュリティ専門家としてのスーツをビシッと着用してインタビューに答えるサイトのURLも発掘された。そんな人物が一人の女性に対しては「ぱよぱよちーん」である。ツイッターのトレンドワードにも「ぱよぱよちーん」が入り、ネトウヨも含め、この数日、この言葉は2ちゃんねる、ツイッターで濫用される言葉となったのである。そして、同時に身バレしたKをおちょくるためにも使われた。

 結果的にKが勤務する企業(外資)の日本法人社長のツイッターにも「セキュリティを守る会社の人間が個人情報晒しをしていかがなものか」といった問い合わせが寄せられ、電凸も相次いだのだろう。Kは会社を去ることとなる。ここで反応したのがろくでなし子である。彼女はこうツイートした。

〈ぱよぱよちーん♪って、すごく腹が立ったり深刻な状況の時とかにつぶやくと、ど~でもよくなれそうで、なんかいいナ。ぱよぱよちーん♪♪♪〉
〈ぱよちん音頭で  ぱよぱよち~ん♪ぱよちん音頭で ぱよぱよち~ん〉

 すると、反差別界隈から一斉に批判が寄せられたのである。最初は敬語で諫めるものが多かったが、後に罵倒になっていく。以下は初期の頃の穏やかな「諫め」である。だが、「ぱよぱよちーん」という言葉を使うとネトウヨ、というのは論理的飛躍があり過ぎる。差別の闘士・K氏を揶揄しているからネトウヨ、といった理屈だろうが、そもそも「ぱよぱよちーん」は語感が面白すぎる。だからろくでなし子は使ったのだ。

〈ろくでなし子さんがネトウヨに乗っかるんですか?〉
〈これはないでしょう。ネトウヨとコラボするつもりですか〉
〈ほお、ネトウヨ側に立つと〉
〈マジでショックです〉
〈まだ削除して謝れば間に合うと思いますよ。ろくでなし子さん自身たくさんのデマや曲解に晒されてきたと俺は認識してますが、その揶揄の相手が今まさにそうだということに思い当たらないのですか?〉

 最後のコメントなどワケが分からない。なぜ「ぱよぱよちーん」と書いたら謝らなくてはいけないのだろうか。本稿冒頭(前編の記事)で紹介した「奇妙な果実」の発信者であるBuddyLeeも「ハイ。ゴミ確定」とツイートした。そして、ろくでなし子をレイシスト認定する流れが来た。また、「裁判で支援したのに…」といった意見も来た。この流れが意味するものは、差別の闘士である正義漢であるK(あざらし)をネトウヨと一緒におちょくるとは貴様もレイシストだ! という決めつけである。だが、ろくでなし子自身は基本的には超個人主義で、自分がやりたいことだけをやる人物である。だから「表現の自由の闘士」として勝手に祭り上げられたといった感覚は持っていたし、困惑もしていたようだ。

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