過去1度の失敗や発言が尾を引く例は土田だけではない。細野豪志衆議院議員も相変わらず2006年の山本モナとの不倫により「モナ夫」と呼ばれ続けている。日本ハムファイターズの斎藤佑樹はルーキーだった2011年、番組の密着ドキュメンタリーで「(ポルシェの)カイエン乗りてぇ」「ビッグになろう」「青山に土地買うってやばいっすか?」と発言したことがテロップ化され、「カイエン青山」と呼ばれるようになった。

 夏の甲子園大会決勝で投げ合った田中将大があそこまでビッグになり、日ハム後輩の大谷翔平に追い抜かれ、自身は二軍でくすぶることも多いだけに、ルーキー時代のこのビッグマウスが味わい深いとして、いまだに「カイエン」「青山」が斎藤を表す言葉となってしまっている。

 結局脊髄反射メディアであるネットというものは、何か固有名詞を見た瞬間、思いついたことをすぐに書き込んでしまう。柳沢敦といえば「QBK」といまだに言われる。これは2006年のサッカーW杯クロアチア戦で加地亮の見事なクロスを受けつつもとんでもない方向にシュートをし「急にボールが来たので…」と発言したことが語源だ。

 ただ、柳沢といえば、クラブ通算108ゴール、代表通算17ゴールの日本屈指のストライカーである。その実績がQBK発言一発で吹っ飛ぶのがネットの世界。理不尽ながら、冒頭の上司風ガハハオヤジの説教は妙な説得力を持つ。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。

※週刊ポスト2017年8月11日号

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