七月場所四日目は藤井四段と貴景勝という、二人の若い人の躍進が印象に残った日だった。白鵬が、貴景勝の度胸の良さを引き出してくれたからだ。私は「ありがとう、横綱」と頭を下げる。
貴景勝は、小結や関脇では終わらない。大関にはなるだろう。そして百七十四センチしかない小さな、若き横綱になるかもしれない。藤井四段も将棋界の横綱になっている。数年後、のぼりつめた彼らを見て「あの子たちもかわいかったころがあったわね」と思い出す。強さや上手さは増すものだけれど、あどけなさは反比例して消えていくもの。目を細めていられるのは今だけなのだから、まったく気が抜けない。
※週刊ポスト2017年8月11日号