「『病気になるのは、病気になりたい奴だ』って豪語していました(笑い)。病院も大嫌いで、『病院に行くくらいだったら、俺は死ぬ』って言っていたくらい。いまも定期的にリハビリに通わなければいけないのですが、『遠いし、行きたくない』なんて言うので、困っちゃうんです」(和子さん)
退院したのは6月のことだ。言語機能は回復しつつあるが、脚本の執筆ができる状態ではないという。
「文字を書くにも簡単な手紙を書くのが精一杯で、すぐに疲れ果ててしまうんですよ。今はテレビドラマを観る気力も湧かなくて、テレビは夜7時のNHKニュースを眺める程度ですね。まだ右足も引きずっている状態ですから、『危ない』とひとりで散歩に出ることも許してもらえません。
40年も前に高齢者を題材とした作品を発表してきましたが、当時はまだ40代で、高齢者の悩みは想像でしか描けなかった。僕は60歳を過ぎても老いを感じたことはほとんどありませんでしたが、今は死を身近に感じています。社会的には“弱者”になったのかもしれません。こうして病気で身体の自由も利かなくなってみると、思うところはたくさんあります」
◆諦める=明らかになる
実は脳出血で倒れる前、山田氏は新しい作品の構想を練っていたという。