講談師は、舞台に出ると小さな机である釈台の前に座り、張り扇を右手に持ってストーリーテラーに徹する。釈台があるのは昔、台本を置いていた名残。ト書、つまり説明文で物語を進行するので、講談は「演ずる」のではなく「読む」と表現される。
一席は20~30分程度。声の強弱と早い調子でたたみかけ、張り扇で釈台をパパンッと叩きながら物語を盛り上げる。特に戦いの場面では「修羅場読み」と言われる調子で情景をリアルに想像させる。
◆真打ちまで約15年 近年は女性講談師が増加
講談は芸の世界ゆえに厳しい社会でもある。前座見習い3か月、前座4年、二ツ目10年、その後、講談協会の審査を得て、真打ちになる。常設の寄席である定席では、二ツ目が一番気を遣う。前座と演目がかぶってはいけないし、トリに師匠がいる場合、義士伝や怪談など大ネタを掛けることはできない。「ネタをその場で探す力が求められる」と銀冶は語る。
長く男性話芸だったが、現在は女性講談師が男性より多い。女性に合った演目が作られ、女性客が増えるなど、講談界も様変わりしてきている。
■取材・文/佐藤俊
※週刊ポスト2017年9月15日号