次の晩、3度の飯より酒好きの記者はリビングにビールを並べ、“飲みニケーション”を図ることにした。折よく帰宅したヤスヒロに「一緒に飲みませんか」と声をかけたが、「自分、酒飲めないんすよ」とにべもなく拒絶。

 午後11時過ぎに帰宅したアユミに、キッチンでまだひとり飲んでいた記者が「お騒がせしてすみません」と言うと、彼女は「いいの、いいの」と笑顔を見せた。アユミが「今夜は私も飲もうかな」と言うので、「じゃ一緒にどうですか」とすかさず誘うと、「明日早いから、やっぱりやめとく」と部屋に戻ってしまった。

 変わり映えのしない数日が続いたある時、カオルの私物がなくなっていることに気づいた。どうやら人知れず退去したようだ。

 ヤスヒロは仕事が忙しく、コウは部屋に引きこもり気味。2階にいるはずのキヨミにいたっては姿すら見ることがない。

 それでもリビングで一緒になることの多いアユミとリサに手を変え品を変えて声をかけ続けると、彼女たちはぽつりぽつりと話をするようになった。

「私は海外生活が長かったから、シェアハウスは自然。向こうではよくあるからね。海外旅行が趣味だから、家賃が安くて光熱費もいらないここに住んでいるの。確かに、ここの住人はみんなコミュニケーションを取らず、距離を保っている。でもそっちの方が楽でしょ」(アユミ)

 この言葉にリサも大きくうなずく。

「住んでいる人とはほぼ毎日顔を合わすので、『今日はみんなで飲みましょう』っていうのはないなあ。アユミのほかにはヤスヒロくらいとしか話したことないですよ。2階にいる40代のおばさんは私たちと顔も合わそうとせず、誰もいない時に1階に下りてきて料理や洗濯をしているのよ」(リサ)

 時々うっすらと感じる人の気配は、キヨミだったのか…納得する記者に向かって、リサが続けた。

「いなくなったカオル知っているでしょ。あの人、本当は転職して海外に行こうとしたけど失敗して、今は群馬にいるんだって。なんかかわいそうだけど、笑っちゃう」

 ニコニコとうなずくアユミ。

 さらに1週間ほど過ごして気づいたのは、みんなお金を持っていないということだ。キッチンに置いてある各自の食器はすべて100均で買ったような簡素なもので、近所に外食チェーンが多くあるのに、みんな必ず自炊をする。また、清掃業者が週1回入るのにリサはこまめに掃除機をかけている。

「業者がすごくいい加減なんです。最初のうちは、入居者が少なくて管理会社から『清掃業者を入れる費用がない』といわれたこともあります。約束が違うじゃないか、って思ったけれど怒ってもしょうがないですよね。しかも業者が掃除してくれるのは共有スペースだけ。お風呂や洗面所は自分たちでやらないと」

※女性セブン2017年10月5日号

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