さらに、再来年の大河ドラマは、『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)が決定。「マラソンの父」と呼ばれ、『陸王』でも登場する“マラソン足袋”を使ったことで知られる金栗四三さんがモデルの作品です。
◆苦境を乗り越えようと走る姿に感情移入
「走る」をモチーフにした作品が多い理由は、視聴者の感情移入をうながせるから。登場人物が辛い過去を乗り越え、苦しい現在から抜け出すために走る姿は、老若男女を問わず応援したくなるなど視聴に熱がこもるものです。
さらに、ランナーにとっての「走る」が、視聴者の仕事、恋愛・結婚、人間関係などの人生全般に置き換えやすいことも、感情移入を加速。「前に進むことで不安や葛藤を払拭し、成長していくランナーの姿から勇気をもらえる」という視聴者が多いのです。
『陸王』で、そのランナー役を担うのは茂木裕人(竹内涼真)。「肘を痛めて野球を断念し、ランナーに転向したものの、マラソンでも膝を痛めてしまう」という苦境が、視聴者の感情移入をうながしています。今後は茂木の姿に、「こはぜ屋」の立て直しを期す宮沢紘一(役所広司)の再生物語や息子・大地(山崎賢人)の成長物語がシンクロすることで、さらなる感動を生み出していくでしょう。
もう1つ、「フレッシュな若手俳優を起用しやすい」ことも、「走る」がモチーフの作品が生まれやすいポイント。『陸王』でも、竹内涼真さん、佐野岳さん、山本涼介さんなどの若手俳優がランナーとして出演し、力強い走りを見せています。
映画でも、『奈緒子』(2008年)では三浦春馬さん、『風が強く吹いている』(2009年)では林遣都さんらが若さあふれる走りを見せて評判になりました。ひたむきに走る姿は、若手俳優のイメージアップとしても最適なのです。
◆日本人は駅伝とマラソンが大好き