さらに特筆すべきは、唯が陰謀で重症を負った大名の嫡男・忠清(健太郎)をタイムスリップさせたシーン。過去の人物を現代へ行かせられるため、戦国では手の施しようもない傷も治療できるのです。
これまでも、女忍者が現代にタイムスリップした『天誅~闇の仕置人~』(フジテレビ系、2014年)、幕末の志士・武市半平太が現代にタイムスリップした『サムライせんせい』(テレビ朝日系、2015年)などがありましたが、「意図的に過去の人物を現代にタイムスリップさせる」という新しい形を採用しています。
つまり『アシガール』は、「現在から過去に移動する」「過去から現在に移動する」「過去と現在を行き来する」という3つの作品タイプを組み合わせた最新のタイムスリップドラマ。自由自在にタイムスリップできる便利な設定にしたことで、ダイナミックな展開を実現させています。
◆タイムスリップの目的は恋心のみ
『アシガール』は、タイムスリップの目的も斬新。これまでのタイムスリップドラマは、「歴史を変える」「人生をやり直す」「異なる世界で生き抜く」「多くの人々を救う」などの壮大な目的が多かったのですが、当作は「ひとめボレした若君(忠清)を助けたい」という恋心のみ。だから視聴者は、自らの命を省みず戦国の世にタイムスリップする唯を肩肘張ることなく、気軽に見守ることができるのです。
また、『JIN-仁-』や『信長のシェフ』などとは異なり、架空の人物を扱っているのもポイントの1つ。そのため、過去を変えてしまうことで生まれる未来の矛盾(タイムパラドックス)を気にすることなく、思い切った脚本や演出を仕掛けられるのです。
黒島結菜さんは2016年夏に『時をかける少女』(日本テレビ系)でもタイムスリップする女子高生を生き生きと演じていました。黒髪の素朴な印象とクルクル変わる表情は、タイムスリップドラマのヒロインにフィット。「過去と現在を行き来しながら成長するヒロインを愛でる」というタイムスリップドラマの醍醐味を感じさせてくれます。
◆登場人物が多彩で、ジャンルはオールOK