歓迎式典で歩く二人の足取りはバラバラ。身長差もあるが、どこかぎくしゃくして、歩くリズムも合う気配すらない。両夫妻が揃った記念撮影では、カメラに向かって作り笑いを見せたものの、トランプ大統領は文大統領の方を見もしない。それどころか、文大統領が握手しようとサッと差し出した右手をスルー。お腹の前に差し出された手に、トランプ大統領が気がつかないわけがないが、あごを上げて憮然としたまま。文大統領は一瞬、手を出したままトランプ大統領の顔を見上げたが、笑顔を引きつらせて手を引っ込めた。
大統領府での会談後の握手も微妙だった。文大統領の安堵の表情に比べトランプ大統領の表情は冷えていた。握手をすると、すぐにその手をスッと引っ込め、瞬間的にぐっと握る。いつもなら手を開いたままゆっくりと戻すのだが、この時は違っていた。まるで嫌なものにでも触ってしまった、という感じにも見える。合同記者会見での握手は、固く握ったものの手の振りは小さく、表情は硬かった。
晩餐会では演台正面がトランプ大統領の席。上席ではあるが、椅子をずらし、身体を捻らなければ文大統領がスピーチする方を向くことができない。その姿勢に疲れるのか、身体や視線を動かしたりと注意力は散漫に…。乾杯でも不機嫌だった。訪韓によって文大統領への印象が好転したとは思えなかった。
さて中国では、故宮博物館を貸し切りにして、習主席がトランプ大統領を出迎えた。到着したトランプ大統領に習主席が手を差し出す。トランプ大統領は近づいてその手を軽く握ると、左手で肘の辺りをわずかに触れただけ。
だが、ビジネス関連のイベントで28兆円の商談がまとまると、ご機嫌で習主席と握手し、その手を長いこと力強く握りしめ、ブンブンと振っていた。ところが一転、合同記者会見で習主席が北朝鮮問題では、「意見が違うのは不思議ではない」と発言をしたため内心おもしろくなかったのだろう、口はへの字に閉じられたまま。それでもビジネスの成果には満足したのか、やはり長く力強くブンブンと手を振る握手をしていた。
トランプ大統領の機嫌の良し悪しはわかりやすい。本人もそれをうまく利用しているのだろう。ツィートもそんな大統領の感情のバロメーターの1つだが、ビジネスツールでもある。それだけに表面的には、各国がそのご機嫌取りに右往左往させられていた感が拭えない。でも、それがトランプ流のビジネスのやり方なのだとしたら、今回、各国は北朝鮮問題を盾にうまく乗せられたのかもしれない。