「家族主義は、ともすれば社会福祉の削減にも繋がりかねない側面を持っています。子育てや介護がいくら経済的に大変でも、『国を頼らず家族でやりなさい』と突き放されてしまう。保育園や介護施設が圧倒的に足りない現状が、家族主義の名の下で正当化されてしまう可能性もある」
婚姻の規定から「のみ」の2文字を削ったことも、大きな問題だと打越さんは指摘する。
「両性の合意“のみ”で決まるのであれば、他人が介入する余地はない。でも、ここから“のみ”の言葉を外してしまうと、例えば“家柄”を気にして親が口を出す、ということがまかり通ることになる。結婚が個人と個人のものではなく、家と家のものに戻ってしまうのです」
自民党の支持母体である政治団体「日本会議」の政策委員で、日本大学名誉教授の百地章氏が監修した書籍『女性が集まる憲法おしゃべりカフェ』(明成社)のなかにも、こんなくだりが登場する。
《『婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し』とあるから高校生の桃子ちゃんが変な男と結婚したいって言っても菊池さんは止められない》
《残念ながら両性の『合意のみ』によって成立した結婚は『合意のみ』によって気軽に破局を迎えやすいものです》
《こんな憲法だと家族が崩壊してるのも頷ける》
安倍政権が日本会議の思想に影響を受けているかどうかは定かではないが、これだけ時代と逆行する改正案を作りながら、自民党は「女性が輝く社会の実現」を党のスローガンに掲げているのだから笑えない。前出の三木さんが語る。
「時代に応じて変えた方がいい条文も確かにあるでしょう。最近は男が弱くなってきて、これでいいのかと思うところもある(笑い)。でもベアテさんが24条に込めた想いだけは、忘れないでほしい。当時の日本人女性が、どれほど過酷な社会で生きていたか。24条はその歴史を示す証であるのです。願わくば、天国の彼女にも胸を張れる国でありたいものです」
※女性セブン2017年12月14日号