その甲斐あってか、松也は2015年から“若手の登竜門”とされる『新春浅草歌舞伎』で、リーダーとして坂東巳之助(28才)や中村隼人(24才)など御曹司たちを引っ張っている。彼らの活躍が客層にも大きな影響を与えている。
「若手の活躍により、劇場に足を運ぶ10代や20代の若い女性が増えています。なかでも、『スーパー歌舞伎II「ワンピース」』で存在感をみせた巳之助さん、隼人さん、坂東新悟さん(27才)、尾上右近さん(25才)の人気はめざましく、楽屋口で出待ちする女の子まで。『新春浅草歌舞伎』も世代交代がなされた当初は、みなぎるエネルギーが印象的でしたが、近年は“興行として成功させる”“お客様を楽しませる”という気概が伝わってきて非常に頼もしく感じます」(関さん)
彼らは「平成世代」らしく、SNSを活用してセルフプロデュースしたり、写真集を発売したり、積極的にテレビドラマやバラエティー番組に出演したりと、これまで歌舞伎を見たことのない層に歌舞伎の魅力をアピールして舞台に呼び込む。こうした軽やかな活動も若い世代の特徴だ。
歌舞伎界の慣習にとらわれることなく、斬新な試みを次々と成功させた先駆者といえば、亡くなった中村勘三郎さん(享年57)である。彼は生前、テレビの密着番組で弟子に対して「このお弟子さんは、一生主役をやることはできない」というナレーションに激怒したことがあった。そして勘三郎さんはこう言ったという。
「こいつが主役を張れるような時代をつくるのが、おれたちの仕事だ」
残念ながら勘三郎さんは志半ばでこの世を去ったが、その魂は海老蔵に受け継がれている。『歌舞伎 家と血と藝』(講談社)の著者である中川右介氏が言う。
「歌舞伎界の頂点に立つ市川宗家の御曹司が、門閥外の実力ある不遇な役者を積極的に登用することで、家系重視の歌舞伎界が大きく変わる可能性があります」
新・染五郎を襲名した金太郎を中心に孫世代も活気づいている。特に海老蔵の息子・勸玄くんが母・麻央さんの死から約2週間後の『七月大歌舞伎』で史上最年少の宙乗りを披露した姿は、多くの人々の涙を誘った。
※女性セブン2018年1月18・25日号