『anone』だけではありません。奇しくも「走り出しが妙に過剰」と感じるドラマは他にもありました。『きみが心に棲みついた』(TBS系火曜22時)は、自信がなくて自己評価の低い今日子が主人公(吉岡里帆)。

 今日子の昔の彼氏・星名(向井理)は優しげでありつつ巧みに今日子の心理を支配し、傷つくのを見て楽しむヤバイ人物。そんな星名から離れたいのに離れられない、という今日子の心の苦闘が描かれていく。

 たしかに「依存」は現代の大きなテーマであり、どう描き出すのか興味深いポイント。キャスティングも注目。ところが、ドラマ初回の走り出しがあまりにドタバタ喜劇調で不自然でした。

「自分のことを上手に語れない引っ込み思案」の設定のはずの今日子が、合コンでいきなり初対面の吉崎に「付き合ってほしい!」と強烈懇願。さらに吉崎を待ち伏せし、その前ですってんころりん。手に持っていた袋の中からブラジャーをぶちまけてしまう(今日子の仕事場は下着メーカー)。何かホラーコメディでも狙っているのでしょうか?

 たまたま初回の「後半」から見始めてしまった私としては、録画していた前半を見て、その過剰なドタバタぶりと後半の雰囲気とが重ならずにとまどった。走り出しの過剰感に、ちょっと残念な印象を抱いたのでした。

 あるいは、法医学ミステリーとして注目の『アンナチュラル』(TBS系金曜夜22時)も、質は違うけれどやはり「走り出し過剰」な傾向が。

 第1話の冒頭からくだくだと登場人物の経歴や背景について説明セリフが続く。物語と共にだんだん分かればいいんじゃない? 舞台となる「UDIラボ」についても場所や組織の成り立ち、何人受け入れと詳しい解説が続きモタモタ感が。

 しかし、後半は前半と対照的にぐぐんとスピーディーになり、鮮やかな謎解きへと突入し、物語に引き込まれました。前半と後半のちぐはぐな印象がここにもありました。

 おそらく、ドラマ第1回目の導入部には「魔物が棲んでいる」のでしょう。視聴者の目を惹きたい、1話目で何とか話題にしたい、という作り手側の意識がオーバーランし、過剰なエピソード・演出を入れたり説明過多になってしまうのかもしれません。しかし視聴者はそんな過剰な装飾がなくても、ドラマ世界のエッセンスや魅力をちゃんと掴み取ります。良いものは良いと見続けます。

 反対に、過剰な助走路を作り過ぎると、引いてしまうことも。そのドラマ全体に対する誤解を招いてしまうかもしれない。第一印象で「このドラマは合わない」と離脱してしまう視聴者がいたとしたら、あまりに残念。

 初回でやりすぎないこともまた、良質な連続ドラマ作りのポイントかもしれません。もちろんまだスタートから2~3話目。ドラマファンとしてはリタイアするつもりはありませんが。

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン