「昭和64年1月7日、小渕恵三・官房長官の新元号の発表直後から金型を作り始め、製造が始まったのは2月半ばでした。当時は消費税導入に向けて1円硬貨の製造を増やしていたため、休日返上、残業続きで対応しました」
つまり、来年年初の発表なら間に合うが、2019年2月24日の即位30年記念式典以降にズレ込むと、新天皇即位のタイミングで“新元号コイン”を市中に流していけるかは微妙になってくるのだ。
しわ寄せは様々な業界の“現場”に及ぶ。大手金融機関の顧客管理システム構築を下請けするエンジニアが沈んだ表情で打ち明ける。
「顧客の生年月日や手続き日などを和暦で管理しているため作業は煩雑になる。社員の端末に表示される画面のレイアウトひとつとっても新元号の画数次第では表示枠が小さいと漢字が潰れてしまったりするので複数案用意しなくてはならず、発表された元号次第でゼロからやり直しになることもありうる」
改元直前の公表でデザイナーやオペレーターの人材が払底すれば、人件費はかさみ、中小のカレンダー会社やシステム管理会社の経営を圧迫しかねない。
“平成最後の日”に向け、心配を募らせる人は少しずつ増えている。
※週刊ポスト2018年3月9日号