山下:彫刻には、人間というモデルが存在しているのに面白いですね。考えてみると、人の形を象る彫刻は不思議な芸術です。
壇蜜:本当に不思議。私は普段の生活でも、胸像や銅像を見つけるとつい近寄ってしまいます。向かい合ってしゃべっている写真を撮ったり、座っている像と並んでベンチに腰掛けてみたり、そういうのがとても好きなんです。
山下:なぜ、そこまで彫刻に惹きつけられるのでしょう。
壇蜜:彫刻の女性に恋をして、やがてその像に生命を与えてもらうギリシャ神話「ピグマリオン」の世界のように、人形や彫刻は心を持っているといまだに信じているんです。このアトリエにある像もすべてに意思があるように感じています。魂を放っているなって。
山下:それは人だけでなく、猫の彫刻にも通じることだと思います。朝倉は大変な猫好きで、19匹もの猫たちと暮らしていた。僕も猫好きなので、猫の生態が実に巧みに表現されているのがわかる。首元を掴まれた『吊された猫』など、面白い生態を形にしていますね。ある人が「猫は猛獣の盆栽だ」と言っていたけれど、まさにその通りです。