常識破りの抱腹絶倒コメディとして大人を笑わせ、楽しませる秀作に仕上がった『おっさんずラブ』。日本ではコメディドラマの多くが、子供っぽくでついていけない。笑えない。そんな意見もしばしば耳にしますが、このドラマは一味違う。
何といっても、転換力=メリハリが効いています。例えば、春田という一人の人物の中にある対比。だらしなくてダメダメの姿と、やたらモテてしまう姿のメリハリが面白い。また、「乙女モード」の黒澤が、仕事場に戻ると一瞬にして別人のようにできる部長に変化してしまうという面白さも。
あるいは、黒澤部長とライバルの牧。その二人のキャラクターの対比も強烈です。ねちっこく熱いおっさんと、二枚目の少年のようなクールで内省的な後輩。攻める黒澤、耐える牧。といった風にメリハリが随所に効いているため、見ていて飽きません。視聴者はグイグイと心地よく引っ張っられていく。
さらに、男たちの関係に膨らみを持たせる存在として唯一、女性として絡んでくる幼なじみのちずの存在も素晴らしい。ダメ男春田に心のどこかでずっと惹かれてきて、しかしそれを素直には認められないできた、というちずのけなげさや心の揺れが繊細に表現されていて、恋愛物語として見応えがある。
役者も演出も脚本も光っていますが、おそらくちょっとした思いつきのネタに流れることなく、物語の軸=純愛がしっかりと揺らがずセットされていて、明確な人間関係の構図も描かれている。そうした土台の上で、役者たちが渾身の力を振り絞って弾けたり暴れたり、真面目にふざけているからこそメリハリが効き、ズレから笑いが生じる大人のコメディドラマになっているのではないでしょうか?
コメディ俳優としての力を発揮してみせた田中圭さんも大収穫。SNSの発信の仕方・工夫も含めて斬新なチャレンジとなり、コメディドラマとは何か、という問題提起となった『おっさんずラブ』の成功は、今後のドラマ界に大きな影響を落としそうです。