なぜ、「執事」がウケるのか。いちばんの理由は、「制限の多さ」だろう。彼らはいつでもどこでも執事らしく、ビシッと決めた服装と落ち着いた表情で、スマートにふるまうのが鉄則。横から話しかけられたら、直角に振り向くのである。言葉遣いも年下の相手や凶悪犯にも、常にですます調で丁寧語。西園寺に至っては、事件に関係した犬にさえ「何かかわったことはございませんでしたか?」とまじめに質問して、メイドの美佳(岡本玲)をビビらせる。
また、執事は常に「ご主人様」に仕える身。いまどき珍しい忠誠心とストイックな態度もこの役ならでは。もちろん、ご主人様に危険が迫れば、身を挺して戦う。武術も執事のたしなみのひとつなのである。それもはぐれ者とかやさぐれ系とは一味違う、パンチ、キックにも折り目正しさが光る。
「私がお仕えするのは、百合子様、ただおひとりでございます」
知性と教養、身体能力。すべてをご主人様に捧げる。厳しい制限の中での独特の様式美とMっ気は、ほかの役ではなかなか出せない。今シーズン、向井理はドラマ『そろばん侍』、ディーン・フジオカはドラマ『モンテ・クリスト伯』に主演。“謎解き”は映画化もされたし、“西園寺”もシリーズ化の可能性もある。執事役は俳優にとって飛躍のきっかけなのだ。