イギリスの研究チームが65歳以上の認知症患者約4万人と非認知症患者約28万人を比較調査したところ、4~20年前に抗コリン薬を処方されていた人は、そうでない人と比べて後に認知症と診断される割合が3割ほど高いという結果が示された。同研究チームは論文で抗コリン薬の使用が将来的な認知症発症と強く関連すると指摘している。

 また、筑波大学大学院の水上勝義教授は、2009年の論文「薬剤による認知機能障害」において、抗がん剤の後遺症について言及。

〈化学療法による認知機能低下は、治療終了後何年か経過した後でも認められる場合があり、(中略)なかには高度の白質脳症を呈し、後遺症として認知症を呈する場合がある〉としている。

◆薬のせいか、加齢のせいか

 中高年にとって、認知機能低下は何より気になる副作用のひとつだ。そのリスクを考えれば、該当する薬剤の服用を止める選択は当然だろう。しかし、その周知徹底は十分になされていないのが現実だ。前出・榎本医師がいう。

「命に関わる病気であったり、治療に緊急を要する場合、多くの医師は『発生しないかもしれない副作用のリスク』より、治療を優先する。また、医師は薬の処方の際、命に関わる重大な副作用については患者に伝える義務があるが、『認知機能の低下』については説明義務がない」

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