芸能

悪役俳優は“絶滅危惧種” 今やお笑い芸人による独占状態に

板尾は『グッド・ドクター』で”悪役”を好演

 ドラマでは悪役を専門とする役者はあまり見なくなり、今やその市場を独占しているのがお笑い芸人だ。コラムニストのペリー荻野さんがその事情について解説する。

 * * *
 先日放送されたNHK BSプレミアム『たけしのこれがホントのニッポン芸能史』は悪役特集。Vシネマのレジェンド、小沢仁志が例の怖い顔としゃがれ声で「(特別警戒シーズンの)年末は500メートル歩くたびに職質される」と語る映像にスタジオゲストの白竜がコメントするというすごい構図だったが、全体を見て、しみじみ思ったのは、悪役俳優が絶滅危惧種だということだ。

 番組ゲストにもなった超ベテラン悪役・田口計はじめ、かつては川合伸旺、藤岡重慶、進藤英太郎など迫力ある悪役スターが数多くいた。だが、今は「出てくるだけで悪のニオイぷんぷん」という専門職的悪役俳優は、ほとんどいない。
 
 そんな中で、悪役を一手に引き受けている感があるのは、お笑い芸人衆だ。今シーズン、初回から視聴者の涙を絞ったドラマ『グッド・ドクター』(フジテレビ系)で、さっそく不気味なムードを出しているのが、板尾創路。自閉症スペクトラム障害ながら、驚異的な記憶力を持つ小児科医・新堂湊(山崎賢人)の受け入れを巡って、関係者が対立する東郷記念病院で、副委員長の猪口(板尾)は、「いいじゃないですか」「予算は私が確保します」「変革は大切」などとにこにこ前向きな発言をする。しかし、その腹の中では、採算のとれない小児外科閉鎖を狙っているのだ。

 板尾はこれまでもドラマ『大奥 第一部~最凶の女』(フジテレビ系)では、美人の娘(沢尻エリカ)を操ってのし上がろうとする腹黒パパ、ドラマ『雲霧仁左衛門3』(NHK BS)では不気味な暗殺者を演じていた。その悪役演技のポイントは、「口から白い歯を一列に見せて微笑んでいるような顔だが、鼻から上はダークな悪意を漂わせる」上下二層構造の作り笑顔。これは立派な芸だと思う。

 同じ吉本芸人では、日曜劇場『陸王』(TBS系)でランニングシューズ開発に苦心する主人公たちを圧迫する大手シューズメーカーのひとりとして小籔千豊が登場。長身で文字通り「上から」嫌な発言を連発した。このほか、日曜劇場は、『華麗なる一族』『99.9-刑事専門弁護士-SEASONⅡ』の笑福亭鶴瓶をはじめ、『ルーズヴェルト・ゲーム』の立川談春、『下町ロケット』の春風亭昇太など、落語家を企業ドラマの悪役にするのが、伝統のようになっている。

見渡せば話題になる「新悪役」は芸人独占状態。その理由は、彼らには、もともと演技力があること。落語家は語りの中でひとり数役をこなし、芸人もコントや舞台で多くの人物になりきる。基礎ができているうえに、よく見るとみんな顔が結構、強面。最近は、優しい顔で怖いことをする悪役も多いが、芸人悪役の場合はふだんのおちゃらけ顔と腹黒モードのギャップを醸し出すのがとてもうまいのだ。

 鶴瓶はNHK大河ドラマ『西郷どん』で岩倉具視役で出演する。岩倉具視といえば、かつて「五百円札」にも印刷されていた公家、政治家。岩倉は維新後、西郷と対立し、彼を追い詰めることになる。悪役もすっかり板についてきた鶴瓶がどんな岩倉になるか。ミスター二層構造笑顔の板尾とともに鶴瓶岩倉にも期待したい。

あわせて読みたい

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン