こうした状況に気を揉んでいるのが、八戸学院大監督の正村である。
「大学進学なら絶対にうちだと思っていますが、100%進学が決まっているわけではないので、不安は残ります。私は信じるしかありません。今後、悪い大人がちょっかいを出すことだってあるでしょう(笑)。イケメンで、人気も期待できるでしょうから」
吉田というと、MAX150キロの直球に目を奪われがちだが、8つの変化球を投げ、とりわけ左打者の膝元に食い込む縦のスライダーは大きな武器である。
このスライダーを伝授した人物が正村だ。指導を始めたのは昨年9月20日、金足農業が秋季秋田大会の準々決勝で敗れ、今春の選抜への道が絶たれた直後。34年前の夏の甲子園でベスト4に進出し、PL学園に敗れた当時の監督・嶋崎久美から吉田を紹介された。
「『良い選手がいるから獲った方が良い』と、嶋崎さんに薦められてね。確かにすげえ球を放っていた。ただ、素質を十分に活かした投球フォームには見えなかった」
以来、正村は八戸から金足まで往復8時間をかけ、何十回と通い詰めて指導にあたった。それほど、吉田の可能性に惚れ込んだということだろう。
「スライダーが全然曲がらなかったんです。その頃のフォームは、アゴが上がり、上から叩きつけるような投げ方をしていた。そこで『頭のてっぺんから尾てい骨までを軸にして、回転させるように』と伝えました。最初はヒジが下がったように感じられ、違和感があったみたいです」