今後の関心は吉田の将来に移っていく。事態は本人だけでなく様々な大人の思惑が交錯する状況にある。

 決勝から遡ること11日(8月10日)。1回戦の鹿児島実業戦を終え、1日の休息日を挟んだ金足農業の練習場は閑散としていた。

 初戦で14三振を奪う快投を見せたとはいえ、当時は吉田狂騒曲のいわば“序曲”で、金足農業の決勝進出を予期できた者など、誰もいなかっただろう。練習を終えた吉田の周りにいたのも、私ひとりだった。

「進路は(甲子園が)終わるまで考えません。もちろん、将来の夢はプロ野球選手になって活躍すること。メジャーリーガーになることは想像もつきませんが、日本を代表するピッチャーになりたい」

 野球人生の次なる舞台について意気揚々と語った吉田は、進路に関しては煙に巻いたが、同じ日、金足農業監督の中泉一豊はこう明言した。

「一部の方は既にご存じかと思うのですが、(吉田の進路は)大学が基本線です。八戸学院大学を予定しております。(同大野球部の)正村(公弘)監督にご指導いただいたからこそ、今の吉田がある。そのご恩を反故にするわけにはいきません」

 八戸学院大は青森、岩手、秋田の3県の大学が加盟する北東北大学野球連盟の1部に所属。西武の秋山翔吾らを輩出する強豪私立である。吉田の才能を開花させた指揮官のもとに進学するのだと、中泉は言った。

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