吉田はスマホで投球フォームを撮影してもらい、微修正を繰り返して正村の指導に沿ったフォームを体得していく。
「ポテンシャルも体力もあって、野球小僧だからどんどんうまくなっていった」と正村は振り返る。
皮肉にも、金足農業の快進撃によって、関係者の困惑も増していく。1回戦を終えた段階では吉田の進学を明言していた中泉も、口を閉ざしていった。決勝後には、こう語るのみだった。
「進路の話はしないように(学校関係者から)指導を受けているんです。今の段階では何も……」
◆「ご恩は感じています」
決勝のピッチングをテレビで見届けた正村から、吉田への「よく頑張った、ご苦労さん」との伝言を頼まれていた。試合終了からしばらくして、吉田に伝えると、安堵するような表情を見せた。
「やっぱり、正村監督の指導が僕には大きかったと思います。フォームに力が入らなくなったというか、力感のないフォームになった。スライダーは投げ方から教えていただいて、すごく曲がるようになった。ご恩はすごく感じています」
そして、こう続けた。
「進路はまだ全く考えられないです」