呉:しかし、安倍が本気で嫌われているかというと疑問なんだよね。かつては、田中角栄が典型的だけど、日本列島改造みたいに積極的に何かをやろうとするために時には悪役も引き受ける政治家がいた。幼い頃から新潟が雪に埋もれて忘れ去られていることへの怨念があって、好きな人はものすごく好きだし、嫌いな人はめちゃくちゃ嫌う。安倍の祖父の岸信介だって、60年安保で全学連に「殺す」って言われて、実際に右翼には太ももを刺されるほど憎まれたわけでしょう。
だけど、安倍の場合は、自慢できるのは血統ぐらいしかなくて、はっきり言って嫌われるほど大した政治家ではない。だから何かで底上げしてやらないと、憎む対象にすらならないんだ。
中川:なるほど。素っ頓狂な昭恵夫人に、お友だちの籠池理事長と教育勅語をセットにして、ようやく嫌いになれるってことですね。
呉:金丸(信)の金の延べ棒や田中角栄のロッキードなんかに比べたら悪行のスケールが全然小さいから、“忖度”みたいな茫漠した周囲の空気も含めて「安倍」にしないといけない。
中川:「ヒトラーの再来」とか言うけど、そんなわけないだろうって。
呉:小泉(純一郎)ならまだしも、安倍にヒトラーほどの大衆扇動能力があるわけがないだろう。
中川:盛り上げるためにとにかく巨悪に見せかけようとするわけですよ。国会前で太鼓叩いてドンチャン騒ぎして。こいつらより安倍のほうがまだマシじゃんって思っちゃう。