2013年11月、轟さんの元に、都立広尾病院から電話がかかってきた。
「バリウム検査の画像に病変が現れているので一刻も早く内視鏡検査を受けて下さい」
この頃、轟さんは食後に鳩尾の辺りが痛み、食事が喉でつかえてしまう症状が気になっていた。
広尾病院で検査を行った結果、「スキルス性胃がん」と判明する。腫瘍マーカーのCA19-9は、正常値の約20倍。その後、轟さんのがんは、ステージ4まで進んでいることが分かった。
轟さんが余命を尋ねると、主治医は言葉を選ぶように、こう告げた。
「月単位で考えて下さい」
この瞬間、轟さんの人生は、大きく舵を切った──。毎年検査を受けていた轟さんのがんは、見逃されていたのではないか。2014年秋、筆者は抗がん剤治療中の轟さんと出会い、胃がん検診の調査を共に進めることになる。
過去の検査画像を取り寄せ、群馬大学医学部・元准教授で、胃がん診断に詳しい外科医の大和田進医師に分析を依頼した。