「密漁アワビを買うのは市場に卸せる普通の業者です。密漁品は業者の手でロンダリングされ、養殖物と混ぜられ、綺麗なアワビになって市場に出回ります」(密漁品を取り締まる海保職員)

 平成20年、築地市場では密漁アワビの売買が事件化した。宮城県警と海上保安庁が、築地市場と札幌市中央卸売市場にガサ入れ(家宅捜索)を行ない、その後の捜査で、東証一部上場の東都水産従業員、ならびに丸水札幌中央水産社員の2人を、密漁アワビと知りながら販売した疑いで書類送検した。そのアワビは仲卸、小売店を経て、寿司屋などから一般客の口に入っていた。

「市場は、あくまで場所だけ貸している立場です。売り物は業者が持ってきて、ショバ代を取るだけだから、それが“どんな素性のアワビかは知る由もない”ということになっている。けど、プロが分からないはずがない。市場ぐるみで密漁品と知っていたはずです」(同前)

 その後、築地市場からの要請を受けた卸業者らは、原産地証明のないアワビは買わない、箱に出荷者名、産地、規格が明示されていないアワビは取り扱わない、原則漁協などに登録してあるアワビ取扱業者に限るなどの対策を打ち出した。

 だが、密漁アワビの流通は止まっていない。市場の関係者たちは豊洲でも善意の第三者を気取り、密漁品を堂々と売買するのだろう。

 2020年には、豊洲市場移転を急いだ理由である東京五輪が待ち受ける。

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