引っ張りだこの新井貴浩(時事通信フォト)
◆「金本さんについていく」
一方、スポーツ紙に加えテレビ各局が争奪戦を繰り広げ、“再就職難”とは無縁なのが今季限りで引退する広島の新井貴浩(41)だ。
「明るいキャラクターに加え、後輩から時にいじられながらも慕われる人間性を高く評価するマスコミ関係者は多い。お茶の間はもちろん、ネット上の人気もある」(別のスポーツ紙記者)
2人のこれまでの歩みを踏まえれば、このあまりに対照的な“定年後”の姿に考えさせられるところは多い。
金本と新井は、広島、阪神で一緒にプレーし、自他共に認める“兄弟分”だった。金本は1992年に広島に入団した。4年目には24本塁打を放ち、低迷するチームで4番に座り続けた。1999年に広島に入団した新井は目立つ存在ではなかった。
「お前が生きていくためには、きつい練習に耐えるしかないんじゃ」
教育係の金本はそう尻を叩き続けた。すっかりお馴染みになった新井の護摩行も、元は金本が精神修養のために行なっていたものだ。
2002年オフ、金本はFAで阪神に移籍。移籍1年目の2003年は開幕から3番に座り、阪神の18年ぶりのリーグ優勝の立役者になった。
後を追うように2007年オフに新井もFA権を公使し阪神へ移籍。理由は「もう一度金本さんと野球がしたい」という思いだった。
「金本がホームランを打ってベンチ前でハイタッチをしていても、新井にだけ張り手といったことは日常茶飯事。選手名鑑の金本の趣味の欄に“新井いじり”と書かれたこともあった。殴られてもつねられても新井は“金本さんがいなかったら、いまの僕はない”と感謝を口にしていた。いつも“頼れるアニキ”と“落ちこぼれた子分”だった」(前出・スポーツ紙記者)