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2019.01.05 07:00 週刊ポスト
宮本輝氏 「私の流転人生は“終わり”で終わらない」

宮本一家の写真
「子どもにしたら能や歌舞伎なんて全然面白くないですよ」と言いながら、「親から与えられたものは大きい」と宮本氏。作品の構成や語りの妙、要所要所の笑いなどは、伝統文化の影響を感じさせる。
知的で粗野、獰猛で涙もろい、熊吾は複雑なキャラクターだ。多くの人をひきつけ、損得を度外視して人助けをする一方で、粗暴なふるまいで身近な人間の恨みを買い、そのことに気づかない。先見性があり、いち早くビジネスを立ち上げるのに、成功の手前で別のことに心を移す。信頼した人に騙され、ある時期からぷっつりツキに見放される。
「戦前には、多少のどんぶり勘定でも事業はできたということでしょう。あの人には1か所、穴が開いていて、戦後はその穴がどんどん大きくなり、水がじゃんじゃん漏れるようになっていった。なぜかはわからない。宿命という言葉でしか表現できません」
◆全共闘から平成までが一時代
「流転の海」は昭和22年から昭和43年までを描く。第一部では街に浮浪児や傷痍軍人の姿が見られるが、戦争の影は次第に薄くなる。政治の動きや自然災害、風俗や食べもの着るものに時代が映し出され、庶民の目がとらえた戦後史としても貴重な作品だ。
最終巻の『野の春』で、昭和42年に熊吾はこんな述懐をしている。「ノモンハン事件までがひとつの時代。それ以後が、もうひとつの時代なのだ。そのもうひとつの時代が終わりつつある」。こうした時代把握は、宮本氏自身のものである。
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