国内

秋篠宮による問題提起、一世一元の制を巡る政権と皇室の対立

秋篠宮は大嘗祭への国費支出に疑問を呈した 共同通信社

 今年5月の改元を前に、皇室内で大きな動きがあった。秋篠宮による問題提起は何を意味するのか。そしてポスト平成の皇室はどうなるのか。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者・慶應大学教授の片山杜秀氏が、皇室と日本について語り合った。

佐藤:昨年11月30日に公開された誕生日会見で、秋篠宮が大嘗祭の費用について「宗教色が強いものについて、それを国費で賄うことが適当かどうか」と発言し、物議を醸しました。あの発言を片山さんはどうごらんになりましたか?

片山:秋篠宮は皇室の私的な費用である「内廷会計で行うべきだ」とまで踏み込んだ。国家と宗教を分離するという戦後民主主義の建前を徹底させる点ではもっともなロジックです。ただその背景にはポスト平成の天皇像を巡る駆け引きがあったように感じます。

佐藤:同感です。あの発言で、天皇の宗教性を守りたい官邸と皇室の対立の構造が露わになった。今回の秋篠宮発言には今上天皇の意見が反映させていると見るのが自然です。

 2016年に今上天皇がおことばで生前退位の意向を示した。しかし官邸は皇室典範を改正せず、1回限りの特例にした。これは「わがままを1回だけは許しますよ」という官邸の姿勢のあらわれです。そんな官邸を秋篠宮は天皇の代弁者として、痛烈に批判した。

片山:そもそも戦後、占領軍は、宗教と一体化した天皇が異常なナショナリズムを喚起したと考えた。この対談で話し合ってきたように、天皇制のもとに生まれた日本型のファシズムが、特攻や玉砕の精神に結びついていく。それが、GHQが危惧した天皇制です。

 だからこそ、宗教と切り離すために昭和天皇の人間宣言から戦後がスタートした。そんな状況で、いまも残った宗教的な仕掛けが、秋篠宮が指摘した「大嘗祭」。それから「大喪の礼」。さらに崩御と結び付いたかたちで、改元を死と再生の儀礼に結び付けた、一世一元の制ですね。

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン