ぼくが代表をしているNPO日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)は、イラク戦争に反対し、小児がんの子どもたちの医療支援をしてきた。ISが台頭してからは、シリア難民やイラク国内避難民への支援が急務となり、難民キャンプなどへの医療支援をするようになった。シンジャール山周辺には、外国人として初めて救援に入り、ミルクやおむつなどの救援物資を届けに行った。

 こうした活動のなかで、ISに拉致された女性にも直接会うことができた。彼女は一家全員がISに捕まった。母親は解放されたが、父親と4人の兄弟姉妹はまだ帰って来ていない。

 彼女自身は、35歳のIS戦闘員に「結婚」を強制された。拒むと殴られ、レイプされた。3か月後、25歳の戦闘員に「転売」された。このときも抵抗したが、木の棒で殴られ、前歯が欠けた。

 あまりにもひどい扱いに同情した人が、逃げるチャンスをくれた。5日間歩いて、クルド自治政府軍ペシュメルガに保護されたという。

 ぼくたちJIM-NETは、こうした女性を病院に連れていったり、別のNGOの精神的ケアのプログラムに参加させたりする支援をしてきた。

 今後は、被害女性がコミュニティーのなかで生きていけるようにすることが課題だ。というのも、ヤジディ教は、結婚するまで性交渉を禁じている。「ISから逃れたとしても、元の地域や家族には、受け入れてもらえないのではないか」という思いが、被害女性を苦しめているのだ。

 ISの考えの下で育てられた子どもたちの問題もある。

 アルビルの難民キャンプで、2歳の女の子をISにさらわれたという女性に会った。目が落ちくぼみ、やつれた姿は、まだ40代なのに老婆に見えた。その女性の子どもが3年後、ISから解放され、彼女の元に戻ってきた。うれしいニュースだ。しかし、5歳になったクリスティーナちゃんは、イスラム教徒として育ち、クルドの言葉が話せない。母と子はゼロから絆をつくっていかなければならないのだ。

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン