溝口:あとは野球賭博か。
鈴木:この前、脳梗塞で突然死したヤクザが野球賭博の地域の胴元をやっていて、月に3000万円くらいの儲けがあったと聞きました。ずっと何やってるんだろうなぁ、カネは持ってんだよなぁと思ってて、死んで初めて野球賭博で儲けてたんだと分かりました。
溝口:どうやって食べているか分からないヤクザは多いですからね。
鈴木:ふだんヤクザを取材する時に聞くのは、人事だとか行事だとか抗争だとか、組にまつわることなんですよね。一方、カネを稼ぐ“仕事”のことは彼らにとってはプライベートで、あまり聞くべきことではないとされている。その点が一般の感覚とは違う。
溝口:彼らは基本的に個人事業主です。自らの才覚で勝手に稼いで上納金を納めているから、手段はバラバラなんですよね。だから、よく警察が特定のシノギを「暴力団の資金源になっている」というんだけど、あれは厳密にはおかしい。だいたい組織的にやっているものじゃないんだから。
【PROFILE】
◆鈴木智彦(フリーライター)すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーへ。『サカナとヤクザ』(小学館)が話題に。最新刊は『昭和のヤバいヤクザ』(講談社+α文庫)
◆溝口敦(ジャーナリスト)みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。『暴力団』『続・暴力団』(ともに新潮社)、『山口組三国志 織田絆誠という男』(講談社+α文庫)など著書多数
※週刊ポスト2019年2月15・22日号