宥和政策で北の非核化が不可能なのは、これまでの北の核開発の歴史を見ても明らかで、文大統領がこのまま対北宥和政策を続ければ、北東アジアの地域情勢はますます不安定になる。
文大統領があくまで“北朝鮮ファースト”で、元徴用工裁判の帰結を黙認するならば、日本側も対抗措置をとらざるを得なくなるかもしれない。その際一番効果的なのが、電子・機械部品や製造機器の輸出禁止であるが、それは日韓双方にとって不利益が大きい。そのような措置をとらなくても良いよう、韓国が適切な国内措置をとってくれることを望む。特に今年は、三・一運動(*)の100周年にあたり、韓国各地で“反日イベント”が企画されていると聞く。元徴用工裁判でも、日本企業の賠償責任を認める判決が続々と出ると見て間違いない。
【*1919年3月1日、日本統治時代の朝鮮で起きた日本からの独立運動】
それでも日本は文政権と妥協する必要はない。北東アジアの安定のため、アメリカと歩調を合わせて文政権に外交的に圧力をかけ、危険な反日政策と対北宥和政策をやめさせるべきだ。
【PROFILE】むとう・まさとし/1948年東京都生まれ。横浜国立大学卒業後、外務省入省。在大韓民日本国大使館に勤務し、参事官、公使を歴任。アジア局北東アジア課長、在クウェート特命全権大使などを務めた後、2010年、在大韓民国特命全権大使に就任。2012年退任。著書に『日韓対立の真相』『韓国の大誤算』『韓国人に生まれなくてよかった』(いずれも悟空出版刊)。
取材・構成/清水典之(フリーライター)
※SAPIO2019年1・2月号