その三階さんの多くは、一般家庭出身である。歌舞伎が好きで、この世界に飛び込んできた若者たちだ。
彼らは、1970年に歌舞伎俳優の後継者不足の悩みを解決するために設立された、一般家庭出身の俳優を育成する独立行政法人「日本芸術文化振興会」の研修を修了している。
「応募資格は中学校卒業以上の男子で、原則として23才以下。2年に1度募集があり、研修期間は2年間で、月曜から金曜の午前10時から午後6時まで授業がある。歌舞伎の実技、立ち回り、とんぼのほか、化粧、衣装、日本舞踊など内容は多岐にわたります」(ベテラン演芸記者)
研修を終えると、彼らは各部屋に弟子入りし、「三階さん」としてキャリアをスタートさせる。日本芸術文化振興会のホームページを見ると、現在22期まで修了し、
《96名の研修修了者が歌舞伎の舞台で活躍しています。これは就業者全体の32%にあたり、そのうち39名が名題俳優となっています》
とある。研修修了者が歌舞伎俳優の3分の1を占めていることからも、この研修機関が重要な役割を担っていることがわかるが、現実は厳しい。研修を終え、さらに長い下積みを経ても、主要な役回りを演じる「名題俳優」になれるのは96人中39人と狭き門。しかも、主役級の役者になるのは事実上不可能だという。
厳しい環境でも、多くの三階さんが歌舞伎を支えてきたが、近年、急に“廃業”を申し出る役者が増加。歌舞伎界の将来を危ぶむ声もあがっている。
※女性セブン2019年3月21日号