最終候補のうち、誰がどこで1つに絞り込むかも不透明だ。最も重要な役割を果たすのが、「新元号の原案として数個の案を選定する」(元号選定手続きについて)と定められている菅官房長官だ。
新元号が決定される4月1日、菅官房長官は複数の原案を選ぶと、「元号に関する有識者懇談会」を開いて意見を求め、結果を首相に報告する。有識者は考案した学者とは別で、そのメンバーも官房長官が決める。
有識者による元号懇の意見を受けて、次に、安倍首相が原案を衆参両院の議長と副議長に連絡して意見を伺うことと定められている。
ただし、元号懇も衆参両院の議長らの意見も、そこで多数決を取って決めるようにはなっていない。平成の改元の際、新元号選考の実務を仕切った的場順三・元内閣内政審議室長は有識者懇での議論についてこう述懐する。
「竹下総理や小渕官房長官との間で『平成』という暗黙の了解があり、時間がないなか有識者懇談会では、『修文と正化は頭文字がSで昭和と重なる』と誘導するしかなかった。そもそも元号懇は有識者の方々に“元号はこのようにさせていただきます。よろしくお願いします”という趣旨なんです」
今回、その元号懇の有識者候補に名前が挙がっているのは、山中伸弥・京大教授や作家の林真理子氏、宮崎緑・千葉商科大教授をはじめ、メディアからは、日本新聞協会会長の白石興二郎・読売新聞グループ本社社長、上田良一・NHK会長、民放連会長の大久保好男・日本テレビ社長たちだ。新聞やテレビの経営者が“有識者”なのは、「みんなで決めた」というアリバイづくりに加えておきたいからだろう。