前述した2月9日放送の『明石家さんまのFNS全国アナウンサー一斉点検』は、「アナウンサーのプライベートを全面的に扱い、結婚だけでなく離婚や不祥事などの過去も笑いに変える」というリスクの大きい構成にも関わらず、視聴率11.8%を記録。SNSを見ても視聴者からの批判的なコメントは少なく、「ネガティブな出来事も、しっかり反省しながら、自ら口にして笑わせる」という形で支持を得たことで、手ごたえを感じたのではないでしょうか。

 もともとアナウンサーは、「知名度は高いのにタレントではなく一般人」「テレビに出ているのに控えさを求められる」など、複雑なポジションの職業。ネットやスマホの普及で、さらに「プライベートが制限され、バッシングを受けやすくなる」などの窮屈な日々を強いられる難しさも増しています。

 しかし、このところ仕事の幅が広がりつつあるフジテレビのアナウンサーたちは、生き生きとした姿を見せはじめています。以前からFODで配信されている『アナマガ』の各コーナーには、各アナが本気で歌う「フジアナ歌祭り」、榎並大二郎アナの「榎並流 俺についてこい!~肉体改造計画~」、戸部洋子アナ、生野陽子アナ、小澤陽子アナの女子力アップ企画「ようこそヨーコ」などがあるように、フジテレビのアナウンサーたちは現在もキャラクターの宝庫。いまだ「フジテレビのアナウンサー」というイメージが強いOBアナも含めて、「かつてのように、地上波の番組で積極的に“再活用”していこう」という戦略は自然なものと言えます。

 あくまで「アナウンス業務がきちんとこなせる」という前提ではありますが、「私はアナウンサーですので」と謙遜させて報道・情報番組だけに縛りつけるのは、個人の尊重が叫ばれる現代においては時代錯誤。今後、フジテレビのアナウンサーたちがどんな番組で、どんな活躍を見せてくれるのか。バラエティーはもちろんドラマ、声優、イベントなど、幅広い分野での活躍が期待できるでしょう。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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