芸能

西島秀俊と内野聖陽『きのう何食べた?』に不思議な空気感

2LDKで男2人暮らし(番組公式HPより)

 視聴者のイメージをいい意味で裏切ることは役者冥利につきるはず。しかし簡単なことではない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 ドラマを見る楽しみの一つに、役者の新たな一面、新鮮な魅力を改めて発見する、ということがあります。

 几帳面で真面目そうな印象だったのに、こんなお茶目な一面があったのか。いつもふざけてばかりいる役者かと思ったら、ふと見せるシビアな表情に色気を感じる……そんな発見をすると、視聴者は幸せな気分になります。

 おそらく役者自身にとってもそうでしょう。自分自身にまとわりついた既存のイメージを時に解き放したり、ぶち破っていくような刺激的な作品、個性的な役柄に出会いたい……そう願っているはず。

 なぜなら役者とは本来、色のついていない器のような仕事だから。さまざまな人格を流し込んでいく、入れ物だから。

 という意味で、今期ドラマの中で期待できる作品がまず、『きのう何食べた?』(金曜夜0:12~テレビ東京系)。

 西島秀俊演じる筧史朗(シロさん)と内野聖陽演じる矢吹賢二(ケンジ)、イケメン俳優2人がゲイカップルという設定。しかも2人の日常を、料理を中心に描いていくという実に新鮮な作品です。

 まず、西島秀俊さんのイメージと言えば……ジェントルマンで二枚目で三つ揃えのスーツが似合う。誠実で真面目、スマートでクール。もちろん今回のドラマでも西島さん演じるシロさんは「二の線」には違いありません。職業は弁護士で、性格はきっちりしていて細かい。近隣のスーパーの底値を把握し価格を比べて数円でも安い方を買い、浮いた予算は貯金するという現実派です。

 でもこのドラマには、そんなシロさんの「完璧さ」がふと崩れる瞬間が用意されている。それが実に味を出しています。柔らかい笑顔をかいま見せる瞬間。自然な活き活きとした表情。あるいは怒るシーンも、西島さんの冷静さやバランス感が揺らぐ危なっかしさがある。予定調和が破綻する感じがいい。見たことのない西島さんにふと出会える気がするから。

 一方、内野聖陽さん演じるケンジは、シロさんとは対照的です。人当たりがよくて社交的、明るい美容師という設定。

 では役者・内野聖陽といえば? 早稲田政経出身、文学座出のインテリ俳優でNHK時代劇『蝉しぐれ』の下級武士・牧文四郎役があまりにはまり役だった。それだけにどうしても純粋・清貧な剣士、といった印象が私の中にまとわりついています。

 しかし、今回はそんなイメージと180度違うオネエ感満載。手つき身のこなしもしなやかで、かわいらしいくて。ケンジがシロさんにじゃれていく、かけあいシーンが微笑ましい。好きだからつい、相手に甘えてしまったり。即興のような不思議な空気感が俳優2人の意外な側面を見せてくれる、優れた「舞台装置」となっているのかもしれません。

関連記事

トピックス

(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
「運転免許証偽造」を謳う中国系業者たちの実態とは
《料金は1枚1万円で即発送可能》中国人観光客向け「運転免許証偽造」を謳う中国系業者に接触、本物との違いが判別できない精巧な仕上がり レンタカー業者も「見破るのは困難」
週刊ポスト
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン