芸能

山口百恵や南沙織ら手掛けた酒井政利氏、成功を生んだ戦略

音楽プロデューサーの酒井政利氏

 日本が高度経済成長に沸いた1970年代。カラーテレビの普及もあって、スターは映画ではなくテレビから生まれるようになる。そんな時代に若者たちを熱狂させるアイドルを次々と手掛けたプロデューサーがいる。1968年に設立されたCBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)に一期生として入社し、当代一のヒットメーカーとして活躍する酒井政利氏である。

「60年代まで日本ではアイドルという概念はなく“歌う青春スター”みたいな言い方をしていました。しかも当時は東芝の奥村チヨや黛ジュン、コロムビアのいしだあゆみや辺見マリなど、アダルト向けの女性歌手が人気を集めていた。だから私はあえてターゲットを中高生にして、他社とは違うヤングポップス路線を狙ったのです。

 ちょうどその頃、一緒に仕事をしていた寺山修司さんが『素材は生の方がいい。添加物を加えすぎてはダメだ』とおっしゃっていたんですが、それは歌い手のリアリティを大事にして、素材の良さを活かすということ。そんな時に出会った南沙織に新しい可能性を感じた私は、彼女の日常を歌にして、日本初のアイドルを作ろうと決めたわけです」

 オーディションに合格して、返還前の沖縄から上京した南は1971年に『17才』でデビュー。理知的な美貌と小麦色に焼けた肌、抜群のリズム感は従来の歌手にない清新な魅力に溢れており、シンシア(彼女のクリスチャンネームにちなんだ愛称)は酒井氏の狙いどおり、日本における“アイドル歌手”第1号となる。

「彼女は自分の主張を持っていて言葉も綺麗。そういう意味では女子アナのイメージに近かった。曲に関してはリアリティを引き出すために、少しでも時間があれば本人と話をして、“沖縄の海が恋しい”と聞けば『潮風のメロディ』(1971年)を、“東京でまだ友達ができない”と聞けば『ともだち』(1972年)を作るなど、彼女がその時々で感じていることを歌にしていきました。つまり成長の記録です。

 スターの宿命として、1972年にはマネージャーとの交際が報じられましたが、そのスキャンダルに対抗すべく、当時すでに死語であった『純潔』をタイトルにしたこともありました」

関連記事

トピックス

田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
《父・修被告よりわずかに軽い判決》母・浩子被告が浮かべていた“アルカイックスマイル”…札幌地裁は「執行猶予が妥当」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン