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谷亮子を48キロ級の女王に育てた「悲劇のライバル」

バルセロナ五輪銀メダリストの溝口紀子氏(時事通信フォト)

 2人の実力はほぼ互角ですが、田村選手が少し精神的に強かった。長井選手はお父さんも有名な柔道家のいわばサラブレッドで、田村選手は叩き上げということも関係したかもしれません。ただ、田村選手が長く王者に君臨できたのは、ライバルの長井選手の存在があったことは間違いないと思います。

 加えて、田村選手はスピードや技術も一流でしたが、特筆すべきは勝負勘。大舞台になればなるほど力を発揮し、どのようなタイプの相手でも戦えました。柔道は自分の得意技をいつ仕掛けるかの駆け引きですが、田村選手はどんな戦い方でもできる。多才で対応力が凄かった。

 そして「管理能力」です。最軽量の48キロ級で一番大変なのは、実は減量なんです。もちろんギリギリの体重を維持する方が有利なのですが、この体重調整が本当に難しい。ただ食事制限をすればいいだけではなく、練習をすれば筋肉がついて重くなったりしますからね。身長が高いと成長期に4階級変わった選手もいるほどです。その点、田村選手は身長が低かったことが幸いしたのでしょうが、とはいえ中学生から成人するまでずっと同じ体重を維持するのはかなり厳しかったはずです。

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