「今回は怪獣の王になるべき存在として、不動明王より龍神の印象でした。ゴジラ以外の怪獣は空を飛び、登場からカッコいい。花道から“タッタッタッタ、バーン”と現われる歌舞伎役者のように魅せますよ。ただね、ハリウッド作品なので発音が“モスゥラ”“キングギドォーラ”なんですよ(苦笑)。日本人としては(抑揚なく)モスラと言いたかった! ゴジラだけは前作で監督と戦ったので“ガッズィラ”でなく、僕は日本語のゴジラでOKなんだけどね。実は今回、英語の台詞をひとつ日本語にしたんです。きっと芹沢ならそこは母国語で話すだろうと思ったから」
その想いはハリウッドで日本発祥のゴジラの作品に出演する日本人としての、ある種の使命感とも感じられる。
「アメリカでは“日本発の作品にあいつが出ているなら”、日本では“ハリウッド映画だけど、あいつが出ているなら”と観るきっかけとなる中間点に置いてもらっているんじゃないかなと思っているんです。日本の若い俳優がハリウッドで活躍するための橋渡し役として何かを残したい、その中間点にいたいという想いもすごく強いです」
ゴジラは生誕65周年を迎え、自身も今年は還暦の節目を迎える。
「自覚はあまりないかな。単純に数字として捉えていて、60と言われれば言われるほど、“(しゅんとして)あっ、そうなんだ……”と萎んでいく(笑い)。40代ぐらいは早く大人になりたかったけど、50代で年齢はどうでもよくなった。演じる役柄なり、ストレッチしないと右脚が痛いといった変調に年齢を感じることはあるけど、俳優には役職もなければ定年もなくて、明確な節目がないんですよね。僕ら俳優はイタコみたいなもので役に体を貸しているから、映画『2001年宇宙の旅』みたいに時の刻みがゆっくりで、“こんなに時間が経っているの!?”という感覚がどこかにあって。見かけも自覚も年齢がわからなくなるのかもしれない」