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安楽死が安易に認められること、緩和ケア医師が危惧

プライシック医師に取材する宮下洋一氏(『安楽死を遂げた日本人』の著者)

 NHKスペシャル『彼女は安楽死を選んだ』(6月2日放送)の反響は医療現場にも広がっている。番組は、スイスで安楽死を遂げた初の日本人女性・小島ミナさん(当時50歳)に密着し、最期の瞬間まで映した衝撃の内容だった。NHKには放送翌日までに300件もの感想が視聴者から寄せられたという。

 川崎市で緩和ケア医をしている西智弘医師は、「安楽死の問題がテレビで取り上げられたことは意義深い」とした上でこう指摘する。

「番組の中では、尊厳死と積極的安楽死を解説していましたが、まだまだ日本ではその違いが知られていません。

 末期がんの患者であれば、がんによる痛みを緩和し、尊厳死の一環として最期を迎えるときには鎮静剤を投与して意識水準を下げ、終末期の苦痛を和らげる『セデーション』を施すこともあります。安楽死でなければならないケースは希で、安易に認めれば、緩和ケアの技術の発展が止まってしまうことを危惧します。

 番組では、同じ多系統萎縮症の女性が登場し、ご本人が人工呼吸器をつける選択をしたことに、娘さんが『(母親の)姿があるかないかは、私の中ですごくでっかい』『家族としてはありがとうだよね』と喜んでいた。家族を含めた支援者とともに生きるという選択肢もあるのではないでしょうか」

 小島さんの存在が、日本人の死生観に大きな影響を与えたことは間違いない。

※週刊ポスト2019年6月21日号

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