「天皇の料理番・秋山徳蔵も料理長を務めた東洋軒の支店で、トリローは好物のアスパラやフルコースに舌鼓を打つ、お坊ちゃまだったわけです。明治の煙草王・村井吉兵衛が専売制導入後に銀行を創業し、東洋軒を誘致したことが彼を音楽の道に導くのも何かの因縁でしょう。陸軍の同期に東急の五島昇がいたり、人脈や地縁をあれこれ推理しながらトリローゆかりの町を歩くのも、散歩好きにはたまらないんです。

 トリロー売り出し中の頃に、上の世代の井伏鱒二や内田百間と鼎談して〈アプレゲール〉呼ばわりされるエピソードがあるのですが、そんな一件にふれながら、僕が80年代の頃に『新人類』として野坂昭如さんの対談に呼ばれていじられたことをふと思い出しました」

◆地を見せない東京の音楽人

『冗談音楽』から生まれたヒット曲「僕は特急の機関士で」や、♪キリンレモン、♪クシャミ三回ルル三錠といったCM。ディズニー作品の日本語版や『トムとジェリー』の主題歌も手がけた三木の仕事はそのまま、現代に繋がっているという。

「僕が子供の頃好きだったクレージーキャッツのコント番組なんかもトリローのラジオ番組の構成が原点なんじゃないかな。コミックソングも含めて、そういう日本流ポップの源流を知る面白さもあった。

 ソフトばかりでなく、ハードな機械にも明るいトリローは、東京通信工業時代のソニー・盛田昭夫&井深大コンビと『下町ロケット』的なノリで意気投合したり、小林一三に目をかけられて宝塚のショー演出を任されそうになったり、人脈の幅も広い。晩年は糖尿病もあってハワイの別荘で悠々自適に暮らし、かと思うとその闘病生活自体を趣味にしてみたり、一言で言えば掴みどころがない人ですね」

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン