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2019.08.16 16:00  週刊ポスト

【著者に訊け】長崎尚志氏 『風はずっと吹いている』

 編集者から広島のことを書いてみては、と提案されたとき、考えたのは原爆のことだった。ミステリーの題材にすることにためらいもあったが、昔に比べて核に対する意識が軽くなり、平然と核武装を主張する人もいる風潮に、改めて原爆と核について勉強して、小説に書いてみたいと思ったという。

「過去にあった悲惨なできごととしてではなく、現在に続く話として書きたいと思いました。原爆から、現代の日米関係や核武装、憲法改正など、一連の流れとして書けないか、と」

 小説では、殺人事件を追う時間の流れに、七十年以上前の広島の焼け跡の場面が時折、挿入される。

〈わしは身寄りのない同い齢ぐらいの子を集めてな、この広島で独立国をつくる。それでそいつらの命は、わしが責任持って守るんじゃ〉

〈混沌と混乱〉の焼け跡で生まれたのが、原爆で家族を失った〈原爆孤児〉たちの共同体で、リーダーとして集団を率いる少年の名前は〈来栖(くるす)〉と言った。

〈少年のグループは、下が六、七歳、上が十八歳くらいまで〉。今は老人になったかつての孤児たちは、来栖について、こう述懐する。〈魅力があったし、底知れぬ怖さがあった〉〈悪魔みたいなカリスマ〉〈人を丸裸にしてしまうというか……相手の隠しごとを、すべてしゃべらせてしまうんじゃ。弱みや、触れられとうない過去をね〉

 生き延びるために、孤児たちが米兵相手に土産物として売ったのが髑髏だ。

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