経済政策の要となる雇用状況も深刻だ。
「文在寅大統領は『8月の就業者は45万人増えた』とアピールしていますが、45万人の就業者のうち39万人は、公園の草取りや清掃などのため政府や自治体に雇われた60歳以上の高齢者だったことが明らかになった。一方で8月の製造業の就業者は2万4000人減少し、30~40代の雇用も23か月連続で下落しています。また失業者が急増して失業給付の支給額が過去最高を更新したため、政府は雇用保険料を23%引き上げることを決めました」(勝又氏)
輸出の減速と雇用悪化で先行きが見えない中、企業の「国外脱出」が顕在化しつつある。
サムスンやLGといった財閥企業は、ベトナムや東南アジア、米国に次々と工場を建設しており、韓国政府の発表によれば、今年1~3月期に国内企業が行なった海外直接投資は過去最高の141億ドルにのぼった。
就任以来、文大統領は韓国経済の財閥依存からの脱却を掲げているが、10大財閥企業の売り上げがGDPの約4割を占める経済構造は変わっておらず、財閥の海外移転志向は韓国経済の空洞化に直結する深刻さを孕んでいる。
業績悪化に苦しむ財閥は文政権に危機意識を高めており、その象徴と言える出来事が、日本が対韓輸出管理の強化を打ち出した直後の7月10日に起きていた。
この日、文大統領は経済界のトップを集めた緊急会合を開いたが、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長、ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン=重光昭夫)会長らが「日本出張」を理由に欠席したのだ。