ツアー最終戦『リコーカップ』開幕の2日前、開催コースである宮崎カントリークラブに到着すると、コースの入場ゲートに設置された関係者席に、渋野が座っておにぎりを頬張っていた。笑顔で挨拶をかわし、彼女はすぐに練習ラウンドに向かっていく。国内外でおよそ2億円の賞金を獲得し、衆人環視のもとで行動する中でも、こうした自然体を保つのは簡単ではないだろう。
愛媛県松山市で開催されていたエリエールレディスでの戴冠のあと、渋野は松山からフェリーに乗って大分へ向かった。その日の深夜に陸路で宮崎入りし、翌日の午前中には石川遼(28)らとのテレビマッチに参加した。そこから約2時間をかけて神話の里・高千穂町に車を走らせ、ボートに乗って「キヨキヨした(清々しい気持ちになるという“シブコ節”らしい)」という。
疲労を蓄積した中でも、自身の名前にも含まれる「日向(ひゅうが)の国」で、パワースポット巡りを敢行したのだ。渋野は言う。
「身体を休めるには、寝るのが一番。でも、宮崎まで来て、ホテルで寝て過ごすのはもったいない! やっぱり、いろんなところに行って、観光名所を回ることで、私は心が穏やかになる。いろんな人に見つかっちゃったけど、写真とかサインとか、求められることはなかったです」
渋野にとって、賞金女王を争う鈴木は、いまだ「憧れの存在」だ。
「技術のレベルが違う。まだまだ遠い存在で、ぜんぜん届かないという印象は強い。でも、(初めて一緒に回った)3月から1ミリぐらいは近づけたかな。それは気持ちの部分。攻める気持ちを忘れずにいられたから先週(エリエールレディス)は頑張れたと思う」
渋野は日本女子ツアーで平均パット数と平均バーディ数で1位を誇り、逆転賞金女王に向けてもパッティングがカギを握るだろう。宮崎カントリークラブの傾斜が強いグリーンは高麗芝が特徴で、芝目によってはボールが予期せぬ軌道を辿る。