芸能

師走にハネたミルクボーイ、松下洸平 無名の新星ゆえの強み

M-1優勝で一躍、ブレイクしたミルクボーイ(公式HPより)

 2019年、ドラマや映画、バラエティなどでブレイクした芸能人は数多くいるが、12月になって一気に脚光を集めた二組がいる。『M-1グランプリ2019』(テレビ朝日系)で優勝したミルクボーイと朝ドラ『スカーレット』(NHK)に出演している松下洸平だ。多くのタレントがいるなかで、彼らの“希少価値”が高い理由とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
 業界用語に「コンテンツやタレントが成功する、盛り上がる」という意味の「ハネる」というフレーズがありますが、2010年代最後となる年越し目前の師走に、思わぬ3人が成功をつかみ取りました。

「師走にハネた」一組目は、22日夜に生放送された『M-1グランプリ2019』で優勝し、第15代王者となったミルクボーイの2人。放送終了直後から分刻みのスケジュールでさまざまな番組に出演したほか、ネットにはネタのモチーフになったコーンフレークが「売り切れている」という投稿が続出するなど、大きな反響を巻き起こしています。

「師走にハネた」二組目は、朝ドラ『スカーレット』に出演中の松下洸平さん。松下さんが演じる十代田八郎は、12月の放送に入って主人公の川原喜美子(戸田恵梨香)と急接近し、初々しい恋模様が描かれたのちに結婚しました。朝ドラ史に残るほど誠実なキャラクターの八郎と繊細な演技の松下さんは、たちまち女性視聴者の支持を集め、ツイッターには「#八郎沼」というハッシュタグが飛び交っています(「沼」は何かにどっぷり浸かるという意味)。

 3人の共通点は、30代前半になる現在まで「ほぼ無名」でコンテストやオーディションでの落選を続けてきたこと。ミルクボーイのボケ・駒場孝さんが33歳、ツッコミ・内海崇さんが34歳、松下洸平さんが32歳で、それぞれM-1予選と朝ドラオーディションで落選を続けてきました。

 さらに、『M-1グランプリ』の審査員を務めたオール巨人さんがブログに「ミルクボーイを昨日初めて観た方は、登場した時、未知の生物を見る感じだったでしょうね」と書いたように、ほとんどの人が知らない新星だったことが反響を大きくしているのです。

◆30代前半まで埋もれ続けてきた強み

 まずミルクボーイは結成13年目のコンビであるにも関わらず、「今年テレビで漫才を披露するのは初めて」であり、テレビ出演も4本のみ。優勝が決まった瞬間も芸人らしくボケるのではなく、「ウソです、こんなん。夢、夢、夢……」とコメントしたほどの素朴さを見せました。

 一方の松下洸平さんは、連ドラに出ても出番の少ないゲスト出演ばかりで、主戦場は舞台。脚本を手がける水橋文美江さんですら松下さんのことを知らなかったようであり、ネット上にも「よくこんな人が埋もれていたな」という声が見られました。

 また、『M-1グランプリ』は近年、トレンディエンジェル、銀シャリ、とろサーモン、霜降り明星と、それなりのメディア露出と知名度があるコンビが優勝していましたし、朝ドラヒロインの相手役も松坂桃李さん、佐藤健さん、中川大志さんなど人気の若手イケメン俳優が定着していました。ミルクボーイと松下洸平さんは、明らかにその流れから外れるため、業界人と玄人ファン以外「これほどハネる」とは思われていなかったのです。

 ネット上に情報があふれ、芸能人たちも自ら発信できる時代になりました。たとえば、芸人のネタもネット動画で気軽に見られるため、面白ければクチコミになったり、バラエティのプロデューサーに見い出されたりするため、「ほとんど知られていないけど実力がある」というタレントは極めて少ないのです。

 さらに、タレントの寿命が延びて売れ続ける人が増え、テレビ番組の出演枠が埋まり、新たなスターが生まれにくくなりました。その点、ミルクボーイと松下さんは「30代前半まで埋もれ続けてきた」「まだ発見されていない隠れた実力者」であることが、無名の新星としての価値を高めているのです。

 無名の新星であることの強みは、ミルクボーイで言えば「大半の番組が初出演であり、MCやレギュラーとは初共演になる」し、松下さんで言えば「初めて仕事をするスタッフや共演者、作品を見る視聴者に新鮮な印象を与えられる」こと。

 より具体的に言うと無名の新星は、プロデューサー、ディレクター、作家などのスタッフに「彼をどう使おうかな?」、共演者に「彼とどう絡もうかな?」、視聴者に「彼がどんな活躍をするのかな?」と、番組に関わるすべての人に刺激を与えられるのです。

◆求められるスタッフと芸能事務所の気概

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン