振り返ればデビューは中学3年生の時。大島渚監督に見初められ『御法度』という男色が一つのテーマである個性的な作品で新人賞を総嘗め。その後の快進撃はご存じの通り。『まほろ駅前多田便利軒』では松田龍平にしかないできない存在感を見せつけ、『舟を編む』では内向的な辞書編集者を見事に演じきりました。テレビでも、朝ドラ『あまちゃん』のミズタクや『獣になれない私たち』の恒星と、ドラマが終わった後も余韻を残すような個性的な人物像を作り上げたことは記憶に新しい。

 ちょっとオタクっぽくて内省的。がつがつしない植物系。クールなおとぼけ風。静けさと強さと純粋さが同居している人。そんな役をやらせたら今、右に出る人がいないのでは。父・松田優作があまりに有名だったので「サラブレッド俳優」とも言えるでしょう。しかし一番興味深い点とは、父のアクション俳優としての激しさや野性味と、龍平さんの持つ独特の静けさとの非対称性、かもしれません。

 松田優作といえばまずは刑事役に探偵役、そして野獣のような殺人鬼といった「激しい」イメージが浮かびます。精神と肉体の贅肉をそぎおとし、ソリッドな姿で鬼気迫る演技をする。後に『家族ゲーム』等で異色の役に挑戦していきますが、常に荒々しさだけは維持していた。

 松田龍平さんも父のDNAを当然ながら持っているのでしょう。しかし表には直接出さず。不可思議な平静さはむしろ、知性や深みや複雑さとなり視聴者の心を掻き乱すエネルギーになっています。そう、獣になれないのではなく、「ならない男の魅力」です。

 一方で、年下の俳優たちには「ヘイヘイ」と呼ばれているとか。飄々としたその仇名は、インパクト大。若い人に対しても偉ぶらない感覚からか、どんな風に呼ばれてもいいよ、というフラットさなのか。今後もヘイヘイと軽く呼ばれながらも、抑制し過剰にならない秘めたる過激な演技を、存分に見せて欲しいと思います。

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン