2017年に文大統領が訪中した際、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)を在韓米軍に配備することに中国が激しく抗議し、文大統領は「THAADを追加配備しない」「アメリカのミサイル防衛体制に参加しない」「日米韓の3国同盟に発展させない」という「3つのNO」を受け入れた。中韓関係重視の姿勢の延長線上にGSOMIAの破棄があるというのだ。
「文在寅政権は日本やアメリカとの安保協力よりも、北朝鮮政策で中国、ロシアと足並みを揃えようとしてきました。それが昨年12月ごろから顕著になってきました。北朝鮮に核を放棄させるために、日韓関係を改善し日米韓の政策協調を続けるというのが日米の立場なのですが。
12月16日に中国とロシアが北朝鮮への制裁を緩和する決議案を提示したときアメリカは『時期尚早』と反対しました。その後、12月30日、中ロは制裁緩和案を再提出しましたが、その決議案には『南北朝鮮間の鉄道と道路協力事業を制裁対象から免除する』との文言が含まれています。文在寅大統領が1月7日に行った新年の演説で『南北の鉄道・道路連結事業を実現できる方策を南北で見つけて国際的な協力につなげる』との提案と同じ趣旨です。文在寅政権の対北朝鮮政策はアメリカよりも中ロ寄りです」(武貞氏)
日本やアメリカを軽視し、中国に接近する文政権の姿勢は、昨年12月24日に中国・成都で開催された日中韓首脳会談で露わになった。
「安倍首相との会談で、文大統領は冷静な姿勢に終始し、丁々発止やるという姿勢を封印して臨んでいた。文大統領にとり前日の中国・習近平主席との首脳会談が重要だったからです。
中韓首脳会談は予定時間を延長して、食事の時間も含めて1時間半にわたって続き、東アジアの安定は韓国と中国の協力関係が軸になるということで意気投合した。韓国大統領府の高官は『韓国と中国は運命共同体であることを再確認した』とまで言いました。習主席との会談が成功したから、安倍首相との会談はさらっと流したのでしょう。
韓国と中国、ロシアの協力関係は今後ますます強まり、その結果、日韓関係修復は遅れると考えられます」(武貞氏)
2020年、朝鮮半島情勢から一時も目を離すことができない。
●取材・文/清水典之(フリーライター)