依田紀基・元名人は「最後の無頼派」とも呼ばれる(写真/共同通信社)

 小林氏も囲碁界最高のタイトルである棋聖などを獲得した名棋士で、依田氏とはタイトルを争ったライバル。「英才特別採用推薦棋士」制度をつくり、仲邑初段を見出した、現在の囲碁ブームの仕掛け人とも言われる。

 対して依田氏は記者会見(昨年10月30日)を開き、逆襲に出る。欠席の経緯をこう語ったのだ。

「前日に会場ホテルに入ったが、ホテルの一室で小林理事長は『依田は対局すべきではない』『依田を優勝者にさせるわけにはいかない』と言い、私は理事長から準決勝対局の不戦敗を申し渡されました。前夜祭の出席も許されませんでした」

 両者の主張が完全に食い違っている。

 実は、対立の背景には“女の怒り”があった。依田氏の妻で日本棋院の現職理事でもある原幸子四段が、別件で小林氏を訴えていたのだ。訴状や裁判記録からざっと経緯をたどってみる。

 原告の原氏はNHKの囲碁番組で司会を務めたこともある人気女流棋士。トラブルの発端は2018年の理事選挙の際、当時常務理事だった原氏が棋士たちに送ったメールだった。

〈今回の役員選挙。この2年間での常務理事会の中で規約違反など様々な理由で注意を受けた人間が反旗。「團理事長は怒りっぽくて酷い人」と、反理事長勢力を作り、たくさんの役員候補を立てて現職を降ろし、総入れ替えしようとしているようです〉

◆棋士によるクーデター?

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