震災から2年後、傾聴喫茶にて。左端が金田住職(写真提供:金田諦應)

「心のケアは進んだのか」を考えるとき、私たちはつい成果を思う。だが、ここでいう成果とは何なのか。金田さんは続ける。

「相手との関わりが進み、客観的に自分自身のことが語れるようになり、他人のことにも関心が持てるような言葉が出てきたら、この人はもう大丈夫と思える。そんなとき私は『大丈夫、大丈夫!』って声をかけますが、いつまた元に戻るかわからない。

 だから、今この一瞬を切り取って、『心のケアは進んだ』といっても意味がないんです。子どもや親、近しい人をあんな形で亡くした人は、『乗り越える』なんてことはありません。一生、背負っていく。(被災者は)背負って歩くその歩き方を必死になって学んできた、そういう9年間だったんじゃないかな」

 カフェ・デ・モンクの活動は、これまで宮城県石巻市などを中心に、岩手県の沿岸部も含め、訪れた地は44か所、開催は370回を超えた。毎回30人から多いときで100人を集める。金田さんが出会ったのは延べ2万5000人以上だ。この取り組みは、これまでに熊本や北海道などほかの災害の被災地など14の地域で“のれん分け”され、宗教の枠を超えた傾聴活動が行われている。

 現在は、月に1回程度、被災地から声がかかれば出向いているという。場所は当初の避難所や仮設住宅から変わっても、やることは同じだ。現在は新型コロナウイルスの影響を考慮して慎重に活動しているという。金田さんはこれからも自分が必要とされる限り、被災者の言葉に耳を傾け続けるつもりだ。

●取材・文/岸川貴文(フリーライター)

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