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1964年の東京パラリンピック出場者が振り返る当時の空気感

皇太子殿下(現・上皇陛下)は、パラリンピックの名誉総裁だった(写真/PARALYMPICTOKYO1964)

 五輪とは違い、その歴史は戦後から始まる。パラリンピック──障害者スポーツの祭典は、56年前に東京で開かれた際は第2回大会に過ぎなかった。東京五輪の余韻が残るなか、ひっそりと開かれた大会に連日通われ、選手や関係者たちと交流されたのが美智子上皇后陛下である。

 1960年代前半といえば、民間出身初の皇太子妃として国民の眼差しを集める一方、とりわけ宮中やメディアの重圧に苦しまれていた時期とされる。若き日の上皇后陛下は、1964年の「もう一つの祭典」にどうして、深い眼差しを注がれたのか。また、そこからいかなる気づきを得られたのか。新型コロナウイルス感染拡大で東京五輪の開催延期が決まった一方で、そもそもパラリンピックの原点とはいかなるものだったのかを知ることは無意味ではないだろう。 『アナザー1964 パラリンピック序章』を上梓したノンフィクション作家・稲泉連氏が描く。

 * * *
 1964年──。そう聞いて誰もが思い浮かべるのは、東京オリンピックのことだろう。

 大会の開会式は10月10日。国立競技場には7万5000人の観衆が詰めかけ、選手宣誓が終わると同時に、8000羽の鳩が一斉に放たれた。その見上げた空に自衛隊の戦闘機F-86が5色の五輪をアクロバット飛行で描いたとき、観衆の熱狂はピークに達した。

 だが、私がこれから描きたいのは、そのように始まった大会が数々の逸話を残し、盛況のうちに幕を閉じた2週間後のことだ。

 その日、11月8日、祭りの後の秋晴れの東京で、それはひっそりと開幕した。「国際身体障害者スポーツ大会」、いまでは「第2回パラリンピック東京大会」として知られるその大会は現行方式とは異なり、事故による脊髄損傷などで下半身麻痺となった車椅子の人を対象とする国際大会だった(※注1)。

(※注1/同大会は「第13回国際ストーク・マンデビル競技大会」とも呼ばれる。ストーク・マンデビルはイギリスの病院で、下半身麻痺患者のリハビリの一環として、スポーツを取り入れたことで知られる。ちなみに「パラリンピック」の「パラ」は現在の「パラレル=もう一つの」ではなく、下半身麻痺を表す「パラプレジア」の意であった)

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