ミルクボーイの今後を語る上で1つ忘れてはいけないのは、彼らが「先輩芸人たちのような売れ方を目指していない」こと。二人は『M-1グランプリ』の優勝後、「今後も大阪を拠点にすること」「漫才をベースに活動していくこと」を繰り返しコメントしているのです。目指すべくは、大阪在住のスター漫才師。賞レースで優勝し、MCを務めるようになると漫才から遠ざかり、“漫才師”というイメージが薄れる芸人が多い中、ミルクボーイは令和時代の新たな漫才師像を模索していくのでしょう。
ネットコンテンツへの出演料が上がり、YouTubeなどで自ら稼ぐこともできるようになったほか、エンタメ業界ではライブイベントの重要性が叫ばれている今、テレビでの成功にこだわる必要はありません。しかし依然として、熱心なファンに限らず、最も多くの人々に見てもらえる媒体は、いまだテレビであるのも事実。ミルクボーイがどのようにテレビと折り合いをつけながら、ネットや劇場などとのバランスを取っていくのか? その行方を見守るのもファンにとっては楽しみの1つです。
現在はどの番組に出ても、“コーンフレーク漫才”ばかり求められてしまいますが、どんなに消費されても、彼らの漫才にかける思いと、大阪という絶対的なホームグラウンドがある限り、一発屋のようにはならないでしょう。
「好きな芸人ランキング」1位常連のサンドウィッチマンしかり、愛されキャラの出川哲朗さんしかり。「人がよさそう」「偉そうでない」というイメージの芸人が幅広い年齢層から支持を集める時代になりました。その意味で不祥事や不倫がまったく想像できないミルクボーイは、「多少トークがスベったところで好感度が落ちる可能性は低い」というのが業界の見方。漫才だけでなくトークでも試行錯誤を続けながら、現在同様の活躍を続けていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。